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デイドリーマーズ ~ロマンス・インパクト~(1/3)

<晩餐会の始まり>

 ペタペタ、ペタペタ。

『ねぇ、小説って知ってる?』

 ショウセツ? なにそれー。

 しらなーい。

 しょーせつってたべれるの?

『人間が書いた物語のこと。小説を書く人を小説家って言うんだ』

 へー。

 ねーねー、おなかすいたー。

 ごはんたべにいこーよ。

『もう、僕の話を聞いて! 昨日ね、老衰で死んだおじいさんの魂を食べたんだ。彼は小説家だったの!』

 ふーん。で?

『小説家の魂はね、特別な味がしたんだ! 普通は経験したことが味になるけど、たくさんの物語を書いてるからなのかな? あまーい部分とにっがーい部分、辛いところもあった。一度の食事でたくさんの味が楽しめるんだよ!』

 ……いいね、それ。

 うん。あまいのもからいのもいっぺんにたべられるなんて、すてき。

 しょーせつか、おいしそう!

『でしょでしょ!? だからみんな、僕と一緒に小説家の魂を食べに行こう!』

 でも、ぼくらにはにんげんをころすちからなんてないよ?

 しょーせつかのじゅみょーがおわるまでまつ? めんどくさい!

 はやくしょーせつかたべたーい!

『大丈夫、簡単さ! 夢の中に入り込んでこう問いかけるんだ』

 ――進捗は?

 ペタペタ。

 
 夢の中でこの足音が聞こえても、絶対に振り返ってはいけない。

 
 ペタペタ、ペタペタ。

 
 底が見えない深淵しんえん双眸そうぼうに、飲み込まれてしまうから。

 
 ペタペタ、ペタペタ――……ペタ、ペタペタペタペタペタペタペタッ、ペタペタペタ、ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ、ペタッペタペタペタペタペタペタ――。